日常と夢

日常と夢

絆創膏

電車の中で、怪我をしている女性がいた。
膝を擦りむいていた。ストッキングは破れていたし、血がはっきり滲んでいた。

彼女はお洒落なワンピースを着ていて、きっとこれからデートか何かに行くに違いないのに、膝の傷がとても痛々しい。

その割に、態度が結構ドライだった。
痛がる様子もないし、手当てもせず普通に歩いてるし、無表情にスマホを弄っている。

私は絆創膏でもあげたい気持ちになった。
もしかしたら鞄に絆創膏が入ってるかもしれない。
そう思って探したけど、絆創膏は無かった。
たぶん持ってたら持ってたで、
「見知らぬ女性に絆創膏をあげて不審がられないか」問題が発生するので、持ってなくて良かったのかもしれない。

その子もドライな態度だったし、手当ては電車を降りてからするつもりで、何の感傷もなかったのかもしれない。

もし絆創膏をあげても、ドライに断られたかもしれない。例えそうだとしても、私は絆創膏を鞄の中に入れておくべきだったと、少し後悔した。