日常と夢

日常と夢

今日見た夢

実家で、両親と家の片付けをしていると、引き出しから、「(自分の名字)さん」と書かれたネームシールが貼られた、古い鉛筆が出てくる。
実家にあるものだから、当然自分の家のものだろうに、自分達の名字(しかも「さん付け」)のネームシールをわざわざ貼ってるのは変だ。

母に
「なんで、自分ちの鉛筆にさん付けで名字かいてるの(笑)」
と聞くと、懐かしそうに「あー、これね。」と思い出して、理由を話してくれた。

聞けば、実家には昔、「山田さん」が同居していたそうだ。
山田さんは男性で、居酒屋の様なところで偶然出会い、知り合いでも何でもなかったが、実家に一緒に住みませんかと、誘ったという。
大分昔の出来事のように話すので、私が生まれる前、兄が幼い頃の話だと思い、
「小さいこどもがいる家に、素性のわからない男の人を招いたの?危ないでしょ」
と驚いて怒ってしまったが、よく聞くと、子供ができる前の、両親たちだけの時代のことらしい。

両親と出会ったとき、山田さんは20歳位で、居酒屋で荒れていたらしい。酔いつぶれたのか、喧嘩に負けてしまったのか。いまどきの若者という風貌。
母は「なんだか辛そうで、帰る場所もろくに無さそうだから、家に呼んでしまった」と言った。
間借りのような感じで暮らすことになったが、居間や台所などで、両親と一緒の時間を過ごすことも多かったという。
そういう時に、山田さんの私物と両親達の私物に区別を付けておく必要があったようで、ネームシールに「山田さん」とか「(両親)さん」とか書いて、生活用品に貼っていたのだ。
最初の鉛筆はその時のものだった。

山田さんは、若者なりにやんちゃで、気が短い所もあったが、実は素直でものわかりがいい人だった。
出会った頃はヤンキー然として、気性が荒かったが、両親と一緒に暮らしていく内に、穏やかになっていった。
服装に派手さはあるが、「普通の若者」になった山田さんは、まっとうな仕事先を見つけ、自分一人で暮らしていくことになった。
実家からは出て行ったが、たまに手紙が届くという。
母は葉書を何枚か見せてくれた。
どの葉書にも山田さんの写真がカラーで印刷されていて、山田さんが笑っている。
結婚をしたり、何か大事なことがあったときに、十数年に一回くらいの頻度で送られてくるらしい。
どれも似たようなアングルからの写真だった。シワが増えたり、顔の感じとか、山田さんが年を取っていく過程が分かりやすく比較して見られると思った。
山田さんは細身だった。鼻が高くて尖っている、シャープな輪郭だった。目元の感じが左右で不揃いだったが、見た目が悪い人ではない。
前髪は後ろ側に流す感じで、年齢より少し若めの服装をしている。今は60代くらいだろうか。