日常と夢

日常と夢

小学校の社会科見学のような時間で、小学生の班のひとつが実家の近所の水の流れを調べることになった。
実家の近くには川(あまりきれいでない)と浄水施設のようなものが高いところに作られている。
人工的に作られた崖のような場所から水が流れ出している。水辺に近づくには古めかしい梯子で崖を登らなければならない。
崖の上には水がプールされた場所がある。
私の幼少期から実家周辺はそんな感じになっており、小学校の社会科見学の話を聞いたとき、(じゃあ、あの水辺を私が案内すればいい)と思った。
見学の当日、小学生は崖の周辺を見て回る。児童たちにはなんだか積極性がなくて、あまり奥の方や、浄水施設まで見ようとはしないので、私が「施設の中も入っていいよ」と促す。
施設のなかを見せていると、水路(白黒の丸石で作られており、表面がぼこぼこしている)を見ていた教師が、丸石に注目して、
「これは◯◯700(よく聞き取れない)だな」という。教師は理系らしく、科学用語を言ったと思う。イオン交換に関するフレーズだった。どうも、丸石に見えるものは、イオンを吸着するフィルターの役目をしている樹脂らしい。私はその発言で、小学生にクイズを出そうと思った。
施設内を自由に見学している児童たちに大声で呼び掛け、自分の方に注目を集める。
(浄水施設内は、小綺麗な下水道のようだった。迷路のような、ダンジョンのような、立体交差する踊り場のような所が目につく)
「人間が飲み水に使う水で、一番取り除く量が多いマイナスイオンは何でしょうか?」
私は児童たちにクイズを出した。
私はこの答えは「Cl-イオン」と答えてほしくてこんなことを言った。
しかし、よく考えてみれば、小学生(四年生くらい?)にイオンの話なんてしてもわかるわけがない。私はしまったと思ったが、踊り場のむこうでクイズを聞いていた頭の良さそうな女の子(眼鏡をかけている)は、近くにあったホワイトボードに何か考えを書き始めたので、(あぁ、最近の子はイオンのことも習ってるんだ)と少し安心する。
クイズを投げかけたものの、私はそのクイズの問題と答えにほとんど根拠がないことを自覚していた。なんとなく正しいっぽいくらいの曖昧な思い付きで言ってしまった。
(人間はよく海水から飲み水を作ろうとするので、食塩NaClを取り除こうとする歴史がある←適当な想像。だから、いまだに一番大量に取り除いているマイナスイオンはCl-なのだ←無根拠)
この問題に根拠が乏しい事は自分でも薄々わかっていたのだが、こども達の前で、なんだか賢い人のように見られたくて言ってしまった。
こどもたちに考えさせている間に、さっきの理系の教師が飛び込んできた。この問題に反論したいのだろう。
私は理系教師に反論させる暇を与えたくなくて、クイズの答えを言い、解説も(それっぽく)喋る。
すると、すぐさま、「そんな訳ない」と理系教師が行ってきた。
私は「NaClを吸着させてるのはホントだ。あなたも水路の樹脂を見ただろう」と言う。
私は水路の樹脂は、NaClを吸着する樹脂だと思い込んでいた。だからこんなクイズをでっち上げてしまった。
理系教師は不機嫌そうに、あの樹脂はNaCl用ではないことと、実際はNaCl用も存在するが、別の名前であり、あの水路には使われていないこと、このクイズは成り立っていないことを説明した。
かなり大きな声で、見学中の子供達にも聞こえたと思う。
私は、(自分のせいだが)恥をかいてしまい、悔しくなった。心のどこかで、(過去にそんな話を聞いたことがあるし、間違っていない)と、まだ思っていた。
私は子供達に、(理系教師の話も一利あるが)私のクイズに明らかな誤りはない、という話をした。大きな声で必死に喋っていた。少し泣きそうで、釈明に近い。

釈明して、結局クイズもその答えもよくわからない状態で、なんだかがっかりしたような雰囲気が漂う。もう見学を終えて、子供達は帰る時間だ。帰り際に同行していた女性教員が、私のそばに来て、私の話ももっともだと思う、と声をかけてくれた。
子供達は列を 作りながら、すこし乱れながら学校に戻っていった。川を わたる橋を曲がると学校だ。

(※起きてから、Cl-は「マイナスイオン」ではなく、「陰イオン」だよな、と思いました)